優先株式の具体的な設計について…

ベンチャー企業においての資金調達は、通常は優先株増資となりますが、その優先株増資においては、株主間契約がもっとも重要なことを合意する契約書となります。その株主間契約についての項目やそれぞれの内容、またドラッグアロングも定めますが、その概略についてもお話します。※ベンチャー経営実務編は、ベンチャー企業のCFOや管理部長や実務担当者向けの内容になっています。

上田祐司
株式会社ガイアックス 代表執行役
ガイアックスでは、「人と人をつなげる」をミッションに、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー事業を展開。また起業家が集うスタートアップスタジオという側面も持ち、社会課題を解決するための事業づくりサポート、投資を行う。シェアリングエコノミー協会代表理事。
公式サイト: https://yujiueda.com/blog
Twitter: @yujiyuji

松田光希
アディッシュ 取締役
2015年4月に株式会社ガイアックス入社後、経営管理部M&A担当を経て子会社GXインキュベートを設立、代表取締役社長に就任。シード出資を多数実行した後、2018年9月よりアディッシュ株式会社へ参画し、2020年3月の東証マザーズへの株式公開を推進。2021年1月より取締役執行役員経営企画本部長(現任)。北海道大学理学部卒。
公式サイト: http://adish.co.jp
Twitter: @Mitsuki_2nd

岩本忠史
ガイアックス 経営管理部長
大学卒業後、飲食チェーンのバックオフィス部門勤務を経て、2003年12月ガイアックス入社。財務担当としてガイアックスグループの資金調達や財務戦略の立案・実行、及び数々の出資先の資金調達支援に携わる。株式会社ガイアックス経営管理部部長。株式会社アドレス監査役。株式会社TRUSTDOCK監査役。上智大学経済学部卒。
じゃあ続いて株主間契約。
これが一番問題ですかね。
そうですね、基本 株主間契約は何がメインになってくるか、もちろん会社にもよるのですけれど、シリーズA以降だと役員、取締役の派遣が 恐らく入ってくるのではないかなと思います。
そもそも取締役会を設置してないケースも シリーズAくらいだとまだあると思うのですけれども、リードVCの取締役を1名社外取締役として選任して 登記してください、という条項が入るのが、一般的じゃないかなと思いますね。
岩本さんどうですか?
そうですね、はい シリーズAもしくはシリーズAの時に、例えば、半年以内に取締会に設置会社に移行しろ みたいな努力義務入れるとか、そういうケースで 取締会設置になるケースが多いと思います。
取締役会設置会社への移行も 入ってるケースがある?
そこはごめんなさい 投資契約に入れて、早い内に取締役会設置会社にしてね っていうところを入れろとは言われますね。
なるほど、じゃあ 取締役の選任だけではなくて、取締役会設置会社への移行もあるケースが あるって事ですね?
あるケースもそうですね いくつかありましたね。
じゃあ、そうなると 社外取締役1名をVCから出資を受けて、社外取締役1名選任するだけではなくて、自分たちで監査役1名探してこなければいけない っていう事になりますよ。
取締役会設置会社だと。
うん、そうですね、はい。
そういう時によく言われるのが 岩本さんなってよって言う。
しかも無報酬でお願いしますって言う。
アディッシュも、私、昔、監査役でしたし。
私も監査役だった会社ありますね。
VCの担当者、結構監査役に なっているケース多いですよね。
うん。
それがまず一番多いアレですかね。 取締役の選任条項ってものですかね。
で、取締の選任条項に準ずるのが さっきちょっと岩本さんも言及されてましたけれど、オブザーバー派遣とかが あるのではないかと思います。
取締役会とか株主定例会みたいな 何かしらの重要なイベントに、取締役は選任しないけれども、例えばシリーズAで出資した フォロー投資家とか、ちょっとオブザーバー派遣の 1名の権利だけは欲しい、みたいなのは、割とよく見ますが 岩本さんこの辺りどうですか?
そうですね 多分重要な会議みたいな形で書いて、に参加させる権利を持っている っていうところが多いですね。
そうですよね、私オブザーバー権限を 行使してスタートアップの経営会議とかに、ちょっとオブザーバーでいきなり入ります っていう会社ほとんど見た事ないのですけれど、行使されているケースって結構見ます?
それは発行会社側の姿勢 だと思うのですよね。
月一の株主定例会とか取締役会 兼 株主定例会を 株主に開放しているケースはみんな来るし、それをしてないのに、ちょっとこれ会議社内 株主向けにやってないって言うのだったら、社内向けの会議でも 僕、参加させて下さいよ、まで言ってくる人は あまりいない感じがしますよね。
そうですね。
なるほど。確かにそもそも月一の 株主定例会をやっているスタートアップは、果たしてどれくらいあるのか と言う話もありますね。
ちなみにシリーズAはさておき Bぐらいまで進んだ会社で、株主定例会をやってそうなイメージがあるのは どれくらいですか?比率。
ちょっと入っているVCの 属性にもよりますけれど、ピュアVCが入ってたら 5〜6割はやってるんじゃないですか。
それぐらいやってますよね?多分。
肌感ですけれど。
僕も結構推奨していて ま、それは取締役会、兼にするか、さておき、株主1人1人対応するより、定例会やってみんなで決まった方が 手っ取り早いですよって言う。
あと、質問とかも そこで一括して処理できるので。
はい。あと、個人的なちょっとこれ 統計取ってないので勝手な推測なのですけれど、月次株主定例やっている会社の方が 成長スピードが早い気がします。
結局IRと同じで 月次で株主に対して報告するものまとめて、月に1回怒られる、みたいな機会を 得られるので結構刺激になると言うか、1年間ずっと報告せずに株主総会だけとか 四半期の試算表だけ送るとかだと、やっぱりちょっとスピード遅いな みたいな感じることはありますね。
うん、ちなみにシリーズA以降ぐらいで じゃあ定例会も開いてません、と。
でも月一ぐらいでスライド10枚から30枚ぐらいの 報告書を送ってます、みたいな比率はどれぐらいと思います?
いやー、1割とか じゃないですか?いっても。
じゃあもう株主定例やってないような会社は 送りもしない、みたいな。
そうですね、試算表だけが残りって感じで。
はい。じゃあ、ちゃんとした会社か ちゃんとしていない会社か。
そうですね、わざわざイベント開かないのに スライド作るのはあまり聞いた事ないです。
うん、なるほどな。
岩本さん結構そういう投資先の定例とか、スライドを送られるとか 参加されたりもらったりするケース多いですか?
そうですね、それこそやっぱり シリーズBCとかやってる会社は、間違いなく月一で送って来ますよね 言わなくても。
私もシードでうちが入って 1年2年ぐらいは調達も、調達する時とかは 定時株主総会ぐらいで連絡してくるぐらいで、毎月試算表を送ってくる事もないし、こちらから出してって言っても 全然出してこないしって会社がほぼほぼです。
わかりました、ちょっとさっきの オブザーバーと取締役なのですけれど、あるVCと話したら、いや、僕ら基本的には 取締役は派遣しないですねって言って、リードやっているのに何でですか? って言ったら、いや、取締役が送って、メリットデメリットって デメリットしかないですよって言って、落ち着いて考えたら確かにそうで、まず投資契約がパワフルすぎて、一取締役の権限をはるかに超えた権利を、投資契約とか株主間契約で取得していて、じゃあ5人の内の1人として 僕が座ったからって何ができるの?
すごく限られていて、逆にその取締役が入ることによるリスク、もちろん個人としてのリスクもあるし、経営サイドにいる という事に対するリスクを考えると、取締役として座らずに オブザーバーとして座った方が得だ、と。
確かになと思って、発行会社としては取締役にVCが送ってくるのに、一部占領された感持ってるかも しれないですけれど、実際はそんな事なくて、VCから取締役は入れ込むのを 逆に義務にした方がいいのではないか、ぐらいの事を感じた事はありますね。
確かに株主間契約と投資契約の内容と、あと、それを持っている株主が少ない場合は そうなるかもしれないですね。
個人的に思ったのは シリーズDとかまでいっていて、優先株を持っててパワフルな権利を持っている 投資家が例えば6〜7社いるとかで、取締役会の構成も ちょっと日本だとあまり見ないですけれど、VCが1名とかではなく VCから4名とかいて、USのスタートアップとかである と思うのですけれど、そういう状況だと、多分1名出しているかどうかの効果が 変わってくるのだろうなって思います。
わかります、そうですよね。
アメリカの話を聞くと 投資家に承認を得るとかではなくて、ボードの構成が既に社内から1人か2人で 他4人〜5人投資家が構成していて、次のシリーズDを どの条件だったらYESでどの条件がNOかって、意思決定するのはむしろ投資家であって、承認を取るとか取らないじゃないな ってそういう感じっぽいですね、どうやら。
なるほど。
日本は取締会を創業者メンバーが 占有しているので承認が必要なのですけれど、
確かに、既存のリードが取締役会の中にいれば そもそも承認も何も関係ないですものね。
わかりました。 じゃあ株主間契約、他はどんな感じですか?
一番ホットなトピックは ドラッグアロングとかじゃないですかね。
そこポイントですよね。 共同売却とかそこら辺は標準で入って来ますよね。
先買い権と共同売却、タグアロング、別名タグアロングは 割と標準的にあるし、あっても別に 誰も文句言わなさそう、みたいな。
はい、で、一番議論の的になるのが ドラッグアロング。
ドラッグアロングです。 強制売却権。
これはどう捉えてます?
まず、前提の一応確認は 確認と言うか説明になりますけれども、あ、そうか、 ある一定の条件が入らないケースもあるので、投資家が簡単に言うと強制的に既存の株主とか 調整株主含む経営者とかの株を、何かしらのMAとかが成立する時にも 強制的にみんなも一緒に売却してねって、リードが進められるような権利 になるのですけれども、個人的には少数株主が反対したせいで、100%買収が成立しないって言うのを防ぐ という目的では、まぁ確かにあった方がいい、一方で、モラルハザードというと ちょっとアレですけれども、20億とか30億とかの売却を ドラッグアロング可能にすると、なんかもうスモールエグジットが いくらでもやり放題になるので、そういうのは起こらないように、金額レンジ条件を付ける、が 落としどころじゃないかなと個人的には思っています。
うん、岩本さんどうですか?
そうですね、金額付けて後は優先株 多数優先投資者っていう表現なのですかね、の過半数にするか2/3するかとか、あとはその経営株主の同意が 必要とか不要とか、その辺りいろんな設計が考えられますかね。
ここで議論になっているのは、経営株主の同意が不要 って言うのが一番議論になっている、
そうですね、はい。
同意が必要だったら議論にならない。
そうですね 確かにおっしゃる通りです。はい。
金額とあとは過半数なのか2/3なのかっていう その辺りですかね。
あとその金額の条件もありますけども 年数もありますよね。3年は見ておけ。
そうですね。
そうですね、確かに。
出資して1年後に 例えばポスト20億で2億出資してっていう会社が、1年後に15億でダウンラウンドだけど 15億で売却案件持って来て、でも優先株トリガーするから2億は回収しつつ みたいな話とかされるとおいおいって感じなので。
5年経って鳴かず飛ばずで 15億の売却の割り勘はまぁまぁわかるって感じです。
ちなみに上田の感覚なのですけれど 確かに1社でトリガーされると問題ですけれど、まぁ、多数投資家 もしくは2/3とかで縛っておけば、どちらが儲かるか儲からないか、つまり事業頑張った方が儲かるのか 売却者は儲かるのかに関する目線のレベルの高さは、投資家の方が目線が高いのではないかなって 気もするのですけれど、そんな事ないですかね?
経済合理性的な判断は してくれそうだとは思いますね。
つまり、これが本当に大きくなるチャンスが 2割 3割あると見込んだら、いや、それ売却するのもったいない って言いそうだし。
実際、ガイアックス自身が 上場する3年前ぐらいに、ベンチャーキャピタルが みんなこぞって売却しようと動いて、プロキシーファイトなったのですけれど、正直、代表者の僕は、売却をするということを言い出した結果の 売却条件のパワフルさに感動して、別の上場企業と ほぼほぼ対等合併まで持ち込んでいて、そんな高値で売れるのですか、うち?みたいな。
よくもまぁ、ここまでまとめて来ましたね、みたいな。
正直、僕、それでぜひいきましょう ってなっていたのですけれど、副社長が、いやいや あと2年で上場できるからって言って反対して、そこまで言うのだったら じゃあ、反対しておく?って言って、で、いろいろあって反対して、結果的に上場して バリエーションはもっと高かったので、投資家も結果喜んだのですけれど、いやー、さすがベンチャーキャピタルやってくるな と思いましたけれどね。
そう言う意味で言うと 経済合理性とか金銭面とか条件面で言うと、確かにいいディールって 持ってきそうな気がしますね。
多分、個人的にここが揉めやすいのは マインドの方だと思います。
育てた会社をそんなVCの一存で、一存って言うのも ちょっと言い方おかしいですけれど、売られるのは気にくわない、みたいな そっちの抵抗の方が大きい気がしますね。
うん、そうですよね。
だから、ロマンかそろばんかの戦いで、そろばんで言えば、向こうの方が 正しい感じが高そうな感じはしますよね。
積極的に安値で売ったりしないですからね。
こういうとアレですけれど、がめつい投資家の 我々も投資家の立場ですけれど、いや、時々あります 結構いいのにこの価格で売却ですか?って言って、いいのですけれど 僕らのポートフォリオからいくと、これもっと高値いって欲しい のですけれどね、みたいな。
別に待ちますのに、みたいな。 そういうのがあるのですけれどね。
上場があと数年頑張って上場したら 80億とか100億いくのに、今20億で売っちゃうのですか? みたいな、そういう話ですよね。
そうそう、昔に比べると そういう意味ではだいぶ、どちらが先に売ろうと思ってどちらがもっと頑張ってよ って思うか比率が変わってきたのかもしれないですね。
昔の社長は最後まで頑張ろうというのが 100%だったような気がしますけれど、最近はだいぶどちらの比率も増えてきている のかもしれないですね。
そうですね、うん。
結局MAもMAが終了でなくて MAされた結果、結構アクセル踏めるケースも 多いと思うのでVCもそこで終わりに、結局売った後のPMIがうまくいかない事が 目に見えての案件だったらどの道ディールするので、そこまで考えて案件選んでくると思うので、結果発行会社側にとっては、あれこれ実際上場しないでMAされた方がいいんじゃない っていうケースは普通にあるとは思うのです。
うん、ここの着地は 現実として金額レンジを調整したり、年数レンジを調整したりして、一定守るけれど最後の最後に何かの条件で 発動しても変じゃないというところで折れるのか、いや、最後の最後までやっぱり経営株主の 同意が必要ですよっていうところ引っ張るのか、どちらなのでしょうね?
経営株主の同意 必須でも割と通るケースは見ますけれどね。
経営株主の同意がなくても 強制発動できるのだったら、確かに今言った条件 まぁどれくらいでしょうね100億以上とかだったら、ノールックで賛成でいい気がしますけれどね。
うん。
20億以上とか言われるちょっと 「うっ」て感じはしますけれど、
うん。
確かに100億以上になってくると リアルに上場も選択肢に入ってくるので、おそらく経済合理性も ディスカッションできるような気がしますよね。
5億とか10億だと、もうちょっと 面倒臭いし売っちゃえ、みたいな。
ちょうど買う会社がいたから売っちゃえ、みたいな わけのわからないロジックが通りそうですけれど。
100億以上でMA成立させるのも 半端じゃないので。
日本だとないですよ。
はい、日本のスタートアップで 100億以上って本当、数年に1件出るか出ないかとか そういうレベルなので、その金額レンジは全然ありだと思います。
わかりました。 他、株主間契約はどうですか?
大体こんなところですか? 主要なところ。
そうですね、株主間契約巻くタイミングで、投資契約内にあった事前承認とか事前通知が 株主間契約に移ってくる感じですよね。ほぼほぼ。
場合によっては表明保証とかも 株主間契約の方に移って、全株主統一するみたいなケースも あるかなとは思っています。
ちなみに投資契約と株主間契約で、この記載二重じゃない? みたいなケースあるじゃないですか?
これ、いるのか?みたいな、投資契約側にあれば こちら側にはいらないのではないかとか、結構、VCの雛形が最初から二重になっている ケースがあると思うのですけれど、岩本さん、この辺りって結果同じだし、いいや で通すって感じですか、
モヤモヤしつつ、一般的なものを入れ込んで 最終的に投資契約と被る場合は、株主間契約を優先するって一言入れる っていうケースが多いですね。
やっぱり、モヤモヤはしますよね。
モヤモヤしますね、これ、はい。
どこの会社もやっぱり 綺麗に出来てないものですか?
いや、綺麗にできていないですよ。 すごく矛盾していますよ。
完璧に整理された美しい雛形って あんまり見た事ないですね。
ないですね。
なるほど。
どこも両方残しておけば、結局どちらかがトリガーして、どちらがトリガーしても大丈夫だよ この条件が入っていれば、みたいな感じで 雛形変えていない感じがします。
うん、そうですね。
なるほど、わかりました。 では、一旦株主間契約はここまでですかね。
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