優先株式増資の際に、企業価値が…

資金調達が難しい時に、時価総額を下げて調達をしようとすると、既存株主が損をする形となります。その際に既存株主を守るために事前に結ぶ「希薄化防止条項」について、背景や仕組みを解説します。
目次

上田祐司
株式会社ガイアックス 代表執行役
ガイアックスでは、「人と人をつなげる」をミッションに、ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー事業を展開。また起業家が集うスタートアップスタジオという側面も持ち、社会課題を解決するための事業づくりサポート、投資を行う。シェアリングエコノミー協会代表理事。
公式サイト: https://yujiueda.com/blog
Twitter: @yujiyuji


今日は優先株のもう一つの項目である 希薄化防止条項という、これまた結構パワフルなものですが、これについてご説明して いきたいと思っています。
希薄化防止条項
起業家と株を取得する、投資家さんが結構、普通株と優先株では、違うという事ですが、まず、これまでいくつかの話をしてきた中で、優先株、どんな内容が多かったと思いますか?
まずレオさん。
まずレオさん。
優先株の中でも、完全参加型と非参加型の二つに、大きく分けられると思っていて、参加型でしたらコストはかかるけれど、優先配当額が支払われた後に、普通株の配当も受け取れるため、参加型の優先株式では、二重で配当金を受け取れるという、投資家にとっては魅力的な株式だと思います。
後者は優先配当額は受け取れるけれど、普通株の分の配当を受け取れないタイプで、この株式に関しては、普通株よりメリットが大きいとは 言い難いかなと思います。
後者は優先配当額は受け取れるけれど、普通株の分の配当を受け取れないタイプで、この株式に関しては、普通株よりメリットが大きいとは 言い難いかなと思います。
残余財産分配の優先権について お話して頂きました。
そういう特徴があるかなと思います。
希薄化防条項って聞いたことある?
そういう特徴があるかなと思います。
希薄化防条項って聞いたことある?
聞いた事ないですね。
ないですね。
優先株にもう一つ 希薄化防止条項というのが、先ほどレオさんが言ってくれたあたりの 話に加えてあるのですが、ちなみにこれはどんな条項だと思います?
資金調達をするにあたって、どんどん希薄化していく、ものだと思うのですけれども、とは言え一気に、巨額の資金調達をする事は難しいので、回数に分ける必要があって、ですが、一定以上希薄化しないように、あらかじめ契約を結ぶとかですかね。
そうですね。まず、希薄化というのは どんどん増資をしていくと、投資家として初め10%持つのに、どんどん希薄化してしまいますという話です。
それを防止するという条項ではあります。
ただ、枠組みは今 アカネさんが言ってくれたような形で、何か上限を決めるとかではなく、また別の枠組みで防止をする、というのが一般的になります。
今日はそちらの説明をしていければと思います。
希薄化防止条項の意味
まず、いつこの希薄化防止条項が 適用されるかというと、ダウンラウンドの時です。
ダウンラウンドわかります?
時価総額、俺等今10億円ぐらいで考えてます。
10億円で出資してくださいよ。
将来は20億円、100億円 500億円になりますよと言って、10億円で出資したのに、1年後、2年後、3年後に、いやー、事業が全然進みません。
すいません5億円でファイナンスします、みたいな。
普通はラウンドって 時価総額が上がっていくのですけれども、ダウンラウンドする時に、前に10億円で投資した株主の持分比率が、過剰に希薄化されていくわけですが、5億円みたいな安い時価総額で調達するので、それを防止するための条項です。
ここまでは大丈夫ですか?
はい。
大丈夫です。
希薄化防止条項の方式の種類
希薄化防止条項の方式の種類ですが、フルラチェットというものと 加重平均方式の二つがあります。
加重平均方式の方にも 更に二つ種類がありますが、それはちょっとまた後で細かく言いますが、ともかくフルラチェットと加重平均の 2種類あるという事です。
これを実際の実例を見ながら
希薄化防止条項の適用のシミュレーション
ちょっとイメージを 膨らまして頂きたいですが、これまず希薄化防止条項がない場合です。
アンチダイリューションと呼ばれますが それがない場合。
0年目に創業経営者が会社を設立しました。
3,000円振り込んで3,000株取得しました。
ほぼ0円振り込んだと考えてもらって まずはいいかなと思います。
で、その後1年目、投資家Aさんがこの創業者が作った会社に対して、プレ時価総額3億円ですよ。
なんかワーケーションのサービスを私が作ったよ。
すごいんだ、これは。
プレ時価総額で3億円あるよという説得をして、投資家Aもなるほど、プレ時価総額3億円だったら それで納得するよということで、1株当たり10万円で 1億円の増資引受をしました。
で、1,000株取得しました。
結果的に合計4,000株になって、4,000株のうちの1,000株取得しました。
これは優先株で増資引受したとしても どっちでもいいです。
ともかく1,000株取得して 持株比率25%。
で、ポスト時価総額が、3億円に1億円の現金が増えたので4億円。
もしくは1株10万円の株価で増資を引き受けて、現時点で4,000株あるので、ポスト時価総額が4億円。
これは普通の増資オペレーションなのですが、ここの部分で何かご質問ありますか?
レオさん大丈夫ですか?
そうですね、今のところ。
プレ時価総額とかポスト時価総額とかって、よく聞いてましたっけ?
プレ時価総額の方は聞いてたのですが、ポスト時価総額は 詳しくは聞いてないです。
プレ時価総額に増資引受分の新株を 足し込んだ時の時価総額、もしくはプレ時価総額に 追加された現金をオンした時価総額、どっちも同じ意味ですが、の事をポスト、後って意味ですよね、ポスト時価総額といいます。
で、ここで1年目の終了時点ではこのような形で、創業者が3,000株、投資家Aが1,000株。
1億円払い込んで 1,000株取得した状態になっています。
ところが2年目。
なんか事業が全然立ち上がりません。
ワーケーションが全く普及しない。
結果的にお金もなくなって、増資をしようと思ったけれど、なかなか時価総額、ポスト時価総額が この前まで4億円だったのに、4億円で出資してくれる株主がいなくて、やっと見つけた投資家Bさんが、既存株数4,000株に対して、プレ時価総額2億円で、1億円の増資引き受けますよ ということを納得してくれました。
これがいわゆるダウンラウンドです。
結果的に既存株数が4,000株に対して、1億円の増資引受するということは、2,000株を取得するということなので
希薄化防止条項が無い場合
どういう持ち株比率になるかというと、創業者3,000株、投資家A1,000株 投資家B2,000株という比率になります。
この時、投資家Aさんは どんな気持ちになりますか?
持株比率が最初25%から今回下がって、15%ぐらいになっているにも関わらず、時価総額が下がっているので 損してますよね。
そうですよね、損してますよね。
なんか投資家Bさんの方がいいですよね。
そうですね。
創業経営者が 時価総額3億円だと言って1億円払込んで、4億円の価値にしたのに あれは嘘だったのか?みたいな、これが希薄化なわけですが これを防止するわけです。
希薄化防止をどう実現するかの方法
防止の方法というのは、これもまたテクニックを使っているのですが、上場する時とかに 優先株が普通株に変わるというのは、それは大丈夫ですか?
大丈夫です。
はい。
普通、優先株1株が普通株1株に変わります。
ただ、ダウンラウンドをくらった時に ある条項が動いて、普通株1株ではなくて、普通株1.2株とか 普通株2株とか普通株3株に、膨れ上がるっていうふうな 規約がついているって感じなのですよ。
ですので、優先株1株が 普通株1株に変わると思っていたけれど、この条項によって受け取れる普通株が、1株ではなくて もっと多いですって言われたら、投資家Aとしても 許そうという話になるわけです。
ここまで大丈夫ですか?
で、それの調整金額を算出する方法が、最初に言っていたフルラチェットと、加重平均というのがあります。
ただ、ダウンラウンドをくらった時に ある条項が動いて、普通株1株ではなくて、普通株1.2株とか 普通株2株とか普通株3株に、膨れ上がるっていうふうな 規約がついているって感じなのですよ。
ですので、優先株1株が 普通株1株に変わると思っていたけれど、この条項によって受け取れる普通株が、1株ではなくて もっと多いですって言われたら、投資家Aとしても 許そうという話になるわけです。
ここまで大丈夫ですか?
で、それの調整金額を算出する方法が、最初に言っていたフルラチェットと、加重平均というのがあります。
フルラチェットとは?
フルラチェットというのは、調整される金額は今回のダウンラウンドの株価と、同じところまで減らされるっていう そういうことになっています。
フルラチェットのイメージ図
ちょっとそれを図解しますと、新規の投資家Bは、1億円で33%取得できるっていうのは わかりますよね?
はい。
プレ時価総額2億円で1億払い込むので、新規で50%、全体で言えば33%取得できるという。
投資家Bがその株価で それだけ株を取得できるというのだったら、前に投資をしていた投資家Aも同じように、Bと同じような株価で取得できますという
これがフルラチェットの考え方なのです。
これだとどうですか?
投資家Bがその株価で それだけ株を取得できるというのだったら、前に投資をしていた投資家Aも同じように、Bと同じような株価で取得できますという
これがフルラチェットの考え方なのです。
これだとどうですか?
投資家Aからすると すごく平等性があるものの、創業者からすると もう半分以上の株を、投資家に渡していることになるので、結構厳しいかなと思いました。
そうですね。 創業者からするとそうかもしれない。
そして投資家Aからすると いや、時価総額下がったけれど、僕が1億円払い込んで プレ時価総額2億円って事だから、俺が半分取って 変じゃないよねっていう気持ちなので、これが悪くないかもしれないですよね。
フルラチェットの考え方自体は大丈夫ですか?
はい。
はい。
フルラチェットの場合の株数の仕上がり
これが具体的な株数で説明すると、例えばこんな感じになるわけです。
投資家Bが投資する時に、投資家Aの株数が膨れ上がって、合計6,000株に対して3,000株取得できます。
で、投資家Aは3,000株取得していて、投資家Aと投資家Bは平等に、1億円払込んで3,000株取得しています。
そういう感じになるってことですね。
フルラチェットの概念を図解した場合
ではこれを もうちょっと図解しますと、まず創業者が安い株価で株を取得しました。
で、投資家Aが 高い株価で少しだけの株を取得しました。
これ横がちょっと図解しているので 図を説明しますけれど、横が株数です。 上が株価です。
ですので、創業者はほとんど金を払い込まずに、すごくたくさんの株をゲットして、投資家Aはたくさんのお金を投資して 少しの株を取得して、大体25%取得していますっていうところです。
で、これに対して投資家Bが入ってきました。
で、Bの時は株価が安いです。
結果的にBが結構な株数を取得して、新しい底辺から見ると、1/3、Bが取得してますっていう話になります。
で、Bが取得した時の株価が安いので、Bの高さが低いです。
そうなるとフルラチェットの条項を、Aが創業者と結んでいたとしたら
この株価が底の株価まで下がって、Aが払い込んだ1億円の株数が膨れ上がります。
加重平均方式とは?
ではもう一つの方法をご説明します。
加重平均方式というやり方です。
実際フルラチェットはあまり見ないです。
実際こちらの加重平均方式の方が多いです。
加重平均方式というのは、調整する金額がダウンラウンドの時の金額ではなく、過去の時価総額と今回投資家Bが 払い込んだお金の総合計の金額から、既存株数プラス 今回払い込んだ投資家Bが取得した株数、その総株数で割った金額、加重平均していますが、まで減らされるって話ですけれど、多分これを読んでも 全く理解できないと思いますが、
加重平均方式の概念を図解した場合
これをちょっと図解して 説明したいと思います。
まず最初に創業者が安い株価で たくさんの株を取得しました。
で、同じく投資家Aが 高い株価で少しの株を取得しました。
ここに入ってきたのが投資家Bです。
すごい安い株価で1億円放り込んで、たくさんの株数をゲットしたという話ですが
これを投資家Aが 払い込んだ瞬間の時価総額って、この創業者とAの四角が時価総額です。
投資家Aが払い込んだ時の、ポスト時価総額っていうのは。
わかります?
創業者とAが持っている株数が 例えば4,000株で、Aが1株10万円って言ったら、4億円の時価総額があるわけです。
で、Bが今回ニューマネーで 1億円放り込んだので、1億円が入っているわけですが、これをこの四角のサイズを加重平均すると、この赤の点線のサイズになるってわかりますか?
で、Aの株価はBの株価までは落ちないのですよ。
この点線の株価まで落ちる。
で、結果的に株価が落ちるから株数が増える。
その分、創業者の株数が減るという話。
この加重平均方式について 何か質問ありますか?
時価総額と
Bの入れたニューマネー 1億円ですね。
足し込んで総株数で割るのですよね?
そうです。
赤の点線のところが ちょっと分からなくて、Bの上のその空白の部分はどうなるのですか?
そこは存在しない と考えてもらって大丈夫です。
あっ理解しました。 下がってるのですね。
このAが投資した後のポストマネー、ポスト時価総額と Bのニューマネーの合計を株数で割った。
総株数で割ったっていう高さが 赤の線の高さですけれど、ここに対してもうちょっと補足説明すると、二人とも理解が進むと思いますが、Bの投資家が今回1億円投資しましたけれど、仮にAが投資した株価の半分の株価で 10万円だけ投資した場合、フルラチェットだったらどうなると思います?
フルラチェットって覚えていますか?
最後の投資家の株価と同じだけ Aの株価も下がってしまうという話です。
じゃあAのも10万円になる。
例えば、Aが10万円で払い込んで、Bが1株5万円で株を取得しました。
ただしファイナンス金額は 総トータルでたった10万円です。
めちゃくちゃ小規模の調達を Bからしました。
その時フルラチェットだったら Aの株数ってどうなるか分かります?
Aの株数は倍になるんじゃないですか?
その通りです。倍になります。
もう1回繰り返しますよ。
新規投資家Bがやってきて、10万円だけ払い込んだだけですよ。 わかります?
例えば、アカネさんが ワーケーションの会社を立ち上げて、1億調達してビジネスやっていて、ちょっと調子悪いな ちょっとだけお金調達しようと思って、Bから株価安くないと 出資しないよと言われて、いいですよ株価安くてもって言って、で、株価を半減させて 10万円ぽっち入れるだけで、それ条項にひっかかっちゃいますね、みたいな。
アンチダイリューションの条項に 引っ掛かってしまいますね。
投資家Aの僕としては、株数倍にしてもらうと困りますと言って、いきなり倍になったら 「おいおい」って感じしません?
持株比率が異常に上がっちゃいますよね 投資家Aの。
そうですよね。
結局、投資家Bの株価が 重要と言えば重要だけれど、投資家Aにとってね。
投資家Bの株価が 俺よりどれぐらい安いのかっていうのは、すごく重要と言えば重要だけど、もう1個項目があって、じゃあそれでどれぐらいのボリュームの株を ゲットしたの?というのも重要になるわけです。
1株、2株、安い値段でBが取得したからと言って、俺の株価もそこまで下げろよと言うのは、言い過ぎな感じがするわけです。
そういう観点でこの加重平均方式を見た場合 どう思いますか?
こっちの加重平均方式の方が、Aの株の株式比率が異常に増えることはないので、こっちの方が良い気がするのですが、二つあるということは何か意味があるのですか?
そうですね フルラチェットの考え方というのは、俺より低い株価で増資したら、俺の株価もそこまで引き下げろよという そういう考え方なのです。
それは大丈夫ですよね?
大丈夫です。
それの方が分かりやすと言えば 分かりやすいわけです。
それがたった1株の増資であろうが、1万株の増資であろうが、要は俺より安い株価にしたら、俺の取得株価もそこまで引き下げろと言う、分かりやすいと言えば分かりやすい。
ただ、ちょっと 過剰に保護しすぎな雰囲気がするわけです。
一方この加重平均方式は 図で見たら分かると思いますけれど、Aの取得金額が、元々のAの黒い線から 赤の線まで落とされるわけですけれど、この赤の線の高さって どうやって算出されるかっていうと、Bの形のサイズによって 赤の高さが変わってくるわけです。
Bがすごいちょっとだけの株数だったら、そんなに赤の線って下に来ないわけですよね。
逆にすごく安い株だけ たくさんの株数を出したら、すごく赤線が下の方までいくわけです。
ですので、今回のBに対していくらの株価で、いくらの株数を渡したのかという この二つのパラメーターを、ちょうどいい感じで Aの株価に調整させられる方法というのが、この加重平均方式なのです。
ちょっと全体的に加重平均方式に対して、まだわかりづらい点があれば ご質問してもらえたら。
それがたった1株の増資であろうが、1万株の増資であろうが、要は俺より安い株価にしたら、俺の取得株価もそこまで引き下げろと言う、分かりやすいと言えば分かりやすい。
ただ、ちょっと 過剰に保護しすぎな雰囲気がするわけです。
一方この加重平均方式は 図で見たら分かると思いますけれど、Aの取得金額が、元々のAの黒い線から 赤の線まで落とされるわけですけれど、この赤の線の高さって どうやって算出されるかっていうと、Bの形のサイズによって 赤の高さが変わってくるわけです。
Bがすごいちょっとだけの株数だったら、そんなに赤の線って下に来ないわけですよね。
逆にすごく安い株だけ たくさんの株数を出したら、すごく赤線が下の方までいくわけです。
ですので、今回のBに対していくらの株価で、いくらの株数を渡したのかという この二つのパラメーターを、ちょうどいい感じで Aの株価に調整させられる方法というのが、この加重平均方式なのです。
ちょっと全体的に加重平均方式に対して、まだわかりづらい点があれば ご質問してもらえたら。
今の説明でだいたい理解しました。
はい、私も分かりました。
世の中一般的には計算式、契約書に書いている計算式について 解説されているのですが、計算式の言わんとする事は こういう図解された事であって、あと、こうやって図解して考えないと、よく理解できないのですよね。
計算式だけやっても多分理解できないので、だからどうしても株価を 下げなければいけないと言うことは、当たり前ですけれど、調達金額が多ければ多いほど、創業者としての株数が希薄化するのは当たり前、持ち株比率が希薄化するのは 当たり前ですけれど、ダウンラウンド時の 加重平均方式の契約を結んでいる時に、安い株価でたくさん集めたら、そのダメージがすごく加速度的に やってくるということを、理解しておかなければいけないです。
加重平均方式の場合の株数の仕上がり
結果的に どんな感じの株数になるかというと、このパターンだと 創業者が3,000株で会社を作りました。
で、投資家Aは元々のパターンだったら 1,000株だったのですが、加重平均方式で契約を結んでさえいれば、1,000株ではなくて、ちょっとだけ補填されて 1222株になります。
で、合計4222株になるわけですが、投資家Bはその半分である、2111株を取得できるってことです。
ですので、投資家Aは投資家Bほど おいしい条件にはならないけれど、一定希薄化を防止するような形の 株数になっているという事です。
よくネット上の計算式の説明とかで、単純に投資家Bの金額が安ければ、投資家Aの転換価格が下がります。
結果的に持ち株比率が増えますって、そこまで書いているケースが多いですけれど、投資家Bの立場からしたら、投資家Aが取得する結果としての 普通株の株数の量によって、時価総額が変わっても困るわけです。
分かります?
要は結果として増えた株数も含めて、時価総額4億円ですと 俺はみなしているので、そこら辺はちょっと計算式で解かないと、1株当たりの株価が算出しづらくなるのですが、そこまでやってこそ これが正しい姿なのです。
今の説明分かりました? ちょっとよく分からない?
分かりました。大丈夫です。
アカネさん分かりました?
説明はわかりました。
今の4,000株っていうところは、この場合って1株当たりの株価は変わってないですよね?
株価は変わってるのです。
1億円を2111株で割った金額が株価です、つまり1株4万いくらになっていると思います。 48,000とか。
この数字って どういう順番で決まっていくのですか?
各株式数とか株価とか。
それは計算しないと出てこないのですよ。
結構面倒臭い話で。
ネット上によく落ちている わかりやすいドキュメントは、投資家Bが1株5万円で 2,000株1億円出資しました。
分かります?
1株5万円で2,000株1億円で出資しました。
そうすると投資家Aの持ち株数が、彼らは10万円で払い込んでいたので、そんな5万円みたいな安いダウンラウンドしたら、俺の株数が増えますよって話になって、例えば1,000株が1,200株に増えますよ。
みたいな解説で終わっている 説明が多いのですけれど、そうすると投資家Bからしたら、ちょっと待ってくれ。と。
4,200株×5万円の2億1,000万円の プレマネーに出資した覚えはないぞ俺は。
それだとちょっとおかしいよってなるので、結果的にじゃあ それも含めて計算し直すとどうなるのですかね?
で、計算するとこういう着地になります。
一次方程式で解けるのですけれど。
分かりました。 ありがとうございます。
加重平均方式の種類
しかも 加重平均方式の中に種類があって、ナローベースとブロードベースと いうのがあるのですが、潜在株、ストックオプションを既発行株式数に、入れるか入れないかというので 計算式が変わってきます。
で、潜在株というのは5%とか 出しているケースが多いと思いますが、すごく計算結果に影響を与えるかと言えば そこまで与えないです。
加重平均方式の種類の比較
投資家にとって有利な点で言えば、フルラチェットが断然有利で、加重平均方式よりフルラチェットが 断然有利です。
もうフルラチェットで入っておけば、ダウンラウンド怖くないというか、1回ダウンラウンドして フルラチェットがきいた後、時価総額が上がったらボロ儲けぐらいの、そういうニュアンスかもしれません。 下手すると。
で、ナローベースの方が相対的に有利。
その次にブロードベースという。
で、何もないのが一番不利ではあります。
何も補填されないのが一番不利ではあります。
創業経営者の立場では?
ここら辺 もう少し解説を加えていきますけれど、よく希薄化防止条項 という名称で言われていますが、創業経営者の立場から見たら、希薄化防止条項というのは、ダウンラウンドした時に、ただでさえダウンラウンドでお金集めているから 結構希薄化するのに、既存の株主の皆の分の株数まで ぶわっと広がっていくので、要は既存の株主の株が増えるというのは どういう事かと言ったら、創業経営者の株が減るってことなので、超分かりやすく言うと、創業経営者における希薄化の促進が めちゃくちゃされますという条項です。
で、得手してこの契約を結んでいるので、結構、怖い条項といえば怖い条項、だという風な認識を持っていた方が 良いと思いはします。
残余財産分配請求権との関係性
続いてこの希薄化防止条項と、残余財産分配請求権との関係性は どういう風に考えますか?
これってどう関係します?
希薄化防止条約との関係性ですよね?
そうですね。
どちらも事業が想定より 上手くいかなかった際の契約だと思うのですが、例えば今回の希薄化の方では 良い条件つける代わりに、残余財産の方では少し 劣後するような状況にするみたいな、そこで調整するのかなと思いました。
なるほど。そういうパターンも あるかもしれないですね。
残余財産分配請求権と 希薄化防止条項というのは、全く別の事を言っているのですか?
それとも重なる部分があるのですか?
それとも全く同じ事を言っているのですか?
残余財産分配請求権に関しては、企業価値が下がったわけではなく、想定より早くエグジットした っていう話だと思うので、その点が違うかなという風に思います。
そうですね。じゃあ それぞれ投資家のどんな事を守っていますか?
投資家の利益を守ってる。
もしくは投資家が損失しないように守っている。
この日本語は両方適用できると思います?
初期にリスクを取って投資した投資家が、損しないようにというところでは一緒ですかね。
うん、そういう関係では一緒ですよね。
それぞれはどういうところに着目して 投資家を守っている項目ですか?
残余財産分配請求権はエグジットした際の、実際の現金がどれぐらい 入ってくるかっていうところで、今回の希薄化に関しては、この先上場した際の持ち株比率を 守っているっていう感じですよね。
うん、そうですね。
残余財産分配請求権は 1億円出した投資家に対して、1億円守りにいきますよ みたいなニュアンスが強いわけです。
一方希薄化防止の方はある投資家が、時価総額10億円で出した時に、後々時価総額が割れた時に、10億円って高すぎる時に 出したよねっていうのを、安い値段の方にちょっと調整する という意味があるので、高い株で買った事の間違いを なくすような効果があって、結果的にキャピタルゲインが たくさん取れますという話です。
あくまで1億円出した人は、希薄化防止条項で転換する普通株分が 増えようが増えまいが、残余財産分配請求権的には 1億円と言えば1億円なのです。
ただ参加権がある時の、その参加権の部分の 比率としてもらえる金額とか、もしくは参加権がなくて、優先株を普通株に転換した上で、参加権としてお金をもらう場合においては、インパクトが出てくるという事です。
今のは別に特に繰り返しではありますが、何か分かりづらいところはありました?
僕は今ので納得いきましたけれど。
はい、私も理解はできました。
はい、分かりました。
希薄化防止条項は必要?不要?
最後のシートですが、巡り巡って希薄化防止条項は、不要であるという意見と 必要であるという意見2種類あるとして、これどっちが正しいとか、どういう要素を考えるとどうであるとか、それはどう思いますか?
今の話を踏まえると 残余財産分配法で、結構保護自体はされている という印象がありますが、その上で更に損しないように 守られているっていう事で、結構、手厚いんだなーっていう印象がありますね。
そうですね、ちょっと やり過ぎではないかという事ですね。
そうですね。
レオさんどうですか?
僕もちょっと 投資家をプロテクトし過ぎていて、経営者にとっては不利な側面が強いと言うか。
そういった意味で 不要論も理解できるという感じです。
ちょっと改めて フルラチェットを思い出してほしいのですが、一番えげつない フルラチェットの話で繰り返すと、俺、10億円ですよ。1株10万円ですよと言って、1億円調達した後、1年後、2年後に 事業がうまくいきませんのでとか、思い通りに事業が伸びませんで、横ばいなので今回時価総額5億円でやります。
1株5万円でやります。
ちょっと数字で計算のずれがありますけれど、簡略化するために説明すると、1株5万円でやります。
で、1億円調達します。
これ投資家Aからしたら 「おいおい」となりません?
俺も1年も2年も前に入れてさーって、おかしくない?って。
俺の株価もう10万円で取得したけれど、5万円の取得に切り替えろよって、言いたくなる気持ちも分かりますよね。
それはどうですか?
はい、それはまあそうですね。
フルラチェットだと特にそうですよね。
さっきの図解したものは、ちょっと創業経営者の持ち株率が元々低かったから、すごくダメージ食らっているので 分かりやすいけれど、ちょっと図解し過ぎで、もしも外部投資家の比率が1割ぐらいだったら、1割が1.5割とか 1割が2割になるぐらいの話なので、という中でどうか という事も含めて考えるとどうですか?
それで経営権を大きく取られてしまうとか、そういった事がないのであれば、早めにリスクを取ってくれた投資家の方が、後から来た投資家よりも、持株比率が少なくなるというのは、避けた方が良いので、それで言うと必要ですよね。
もう一つの観点は これも超当たり前の話ですけれど、例えば時価総額10億円ですよと言って、投資した投資家がいるのです。
で、1年後、2年後 時価総額が5億円になりました。
この下がった時価総額 もしくは下がった株価、誰が責任を取るべきだと思います?
時価総額10億円だと言って、投資を促した創業者が 非難されるべきだと思います。
うん、非難されるべきかもしれません。
じゃあ例えば上場株式の 株式市場だったらどうですか?
会社の所有者は株主ですけれど、業績悪化とか時価総額の暴落に関しては、経営陣が責任を持つと思います。
じゃあ例えば 上場企業で時価総額1000億円で、経営者が公募増資をしました。
時価総額1,000億円で株を買った人が いっぱいいます。
大丈夫ですか?
ところが2年後、パッて株式マーケット見たら、500億円に落ちています。
これは誰の責任ですか?
誰が損失を被らなければならないですか?
損失でいうと株主も損しますね。
そうですよね。
1,000億円の価値があると思って 投資をしたのが株主なのだから、その株の下落分を、俺、損したくないからお前責任取れよ というのはおかしな話ですよね。
自分の責任です。
それを責任取るのが株主でしょって言う。
今回、希薄化防止条項は、出てくる人が 創業者で大株主で経営者と、投資家Aと投資家Bだったら、創業者のせいという話になるのですけれど、例えば、エンジェル投資家が 普通株で持っていたとしたら、エンジェル投資家からしたら、何で俺が責任取らなければダメなんですか? って話になるわけです。
要は優先株が優先されて 普通株が劣後してしまうので、普通株の人たちが希薄化加速してしまうので。
お前10億円で投資したけれど、あの判断が間違っていたんじゃないか、お前らって。
エンジェルからしたらね。
そんなこんな条件付けるなんて 甘えた事言うなよ、みたいな。
フルラチェットで投資するという事は、株価算定してないのか お前ら投資する時にっていう。
そういう話にもなるわけですね。
実務的にはどうなっているかというと、日本だとだいたい ブロードベースの加重平均です。
フルラチェットはまず見ないし、付いていないのもまず見ないです。
だいたいブロードベースの 加重平均には付いています。
で、当たり前ですけれど、守れば守るほど 時価総額は引き上げられます。
守ってなければ守ってないほど 時価総額は下がります。
要はこれも経営者サイドが、ハイリスクハイリターンを取りに行っている結果、こういうのを付けてでも、時価総額を引き上げていると 考えてもらっても大丈夫かなという気もします。
今回、お前らの会社時価総額10億円で 調達するって言うけれど本当?って。
いやでも1倍の参加権付きですよと。
しかも希薄化防止条項 ブロードベースで付いているのですよ。
いいじゃないですか。
この時価総額でいきましょうよ。
言ってみればこんな事を 暗に言っているのかもしれません。
では、以上で話は終わりますが、全体を通じてご質問とか何かあれば。
実際に上田さんが投資判断をする時に、このあたりで話合ったケースとかって あったりするのですか?
通常のエクイティファイナンスでは あまりないですよね。
ブロードベースの加重平均かなって。
で、時々投資家が、ナロードベースでやってよ みたいな事を言ってくる時があるのですけれど、いや、ブロードベースで いいじゃないですかって返したり、いや別にナローベースならばナローベースで いいですって返したりすることもあります。
大して違わないので、5%ぐらいしか上がってこないので。
ちなみにまた別の話ですけれど、優先株で増資せずに 普通株で増資しているケースがあって、そうすると当たり前ですけれど、希薄化防止条項が付いてないのですよ。
で、その時に、これダウンラウンドでもしないと エクイティ調達できないよと悩んでいる人がいて、僕が契約書とか株式構成とか見て、えっ?これダウンラウンド したらいいじゃない、みたいな。
希薄化防止も付いてないのだから、心配することもなく 思いっきりダウンラウンドしてやったらって。
っていうかガイアックスが すごい低い時価総額でよければ、僕が出しますよ。
ただこんな低い時価総額で ガイアックスが出すって言ったら、既存株主の皆様が 黙っていないと思いますけれど。
もしも既存株主が、俺等本当どんな時価総額で ガイアックスが出資しようと、俺等は乗らないと言うのだったら、僕等は増資するので安心してください。
で、蓋を開けてみたらやっぱり 僕等にお鉢は回ってこなくて、そんな安い時価総額で 第三者に株を渡してなるものか。
既存株主のみんなが 追加投資をされてましたね。
あーなるほど。
もしもあれに フルラチェットが付いていたら、僕等が出したかもしれないですよね。
で、創業者の持株比率が 劇的に減っていたかもしれないですね。
あとそのダウンラウンドを検討した時には、一応計算式に当てはめて ちゃんと計算してみてから、ダウンラウンド動いてくださいね とは言っています、経営者のみなさんに。
ちょっと計算が面倒臭いからって やらない人もいますが、ちなみにそれで調達したら、持ち株比率どうなるの? ぐらいは蓋開けてから動こうねって。
分かりました。 ありがとうございます。
はい、では今日は 以上で終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました
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